「そうか…」
スレイは残念そうな表情を浮かべた。
「研究の成果を伝える事ができたからな。わしはこれで満足しておるよ」
グレアムは椅子からゆっくりと立ち上がると、本棚から一冊の本を取り出した。
「これにはクリスタルクラッシュの男から聞いた事の全てが書かれておる。持っていくがよい」
「もらっていいのか?」
スレイは驚いて、彼を見た。
「よい。わしももう老いた。次はお前さんが更なる高みを目指して研究してくれ」
グレアムは本を手渡しながら、小さく頷いた。
「ありがたく頂戴する」
スレイは深々と頭を下げて、本を受け取った。
「ありがとうございます」
マーチンはそれを見てスレイと同じく深々と頭を下げた。
「ただいま戻りました」
ザックは小屋に入ってメディナ、ミーナ、リリアの姿を認めると、ほっとしたような表情を浮かべた。
「扱えるようになった?」
「はい。基礎は何とか」
「よろしい」
メディナはにっこりと微笑みながら頷いた。
ザックはダリルと共に席につくと、
「あれから何か動きはあった?」
と、尋ねた。
「戦争の準備を本格的に始めたらしいわ」
リリアは険しい表情になって、答えた。
「戦争…!?」
ザックは息を呑んだ。
「砦に兵力を集めているらしい。隣国に攻め込む意志があるのは明らかだ」