その日の放課後、私とナナミな教室のベランダにいた。
私はベランダの壁に頬杖をついて、グラウンドを眺めながらため息をついた。
「何か最近疲れる」
「えー、何で?」
「あいつのせいで」
「ああ。ケイタくんね」
壁にもたれていたナナミは、私と同じ体勢になってグラウンドを見た。
「いいじゃん、好かれてて」
「よくないよ。あいつむかつくし」
「そーかなあ……」
そうだよ。
いきなりキスするし、自分勝手だし。
本当、嫌な奴。
「あ。あれケイタくんじゃない?」
ナナミが指さす方向にはサッカー部がいて、その中にはナナミが言ったようにケイタの姿があった。
部活やってたんだ、あいつ。
シュート練習をしていたケイタが蹴ったボールは、ゴール横のフレームに当たって私たちの下に転がってくる。
こっちに向かってくるケイタを見て、私が隠れようとした時だった。
ナナミは私の後ろに回って私の右腕を掴んだ。
「ケイタくーん!」
ナナミはそう言って、私の腕を上げて大きく横に振った。
ナナミの声に気づいたケイタは、私の方を見て笑いながら手を振りかえしてくる。
「や、止めてよ!」
私がナナミの手を慌てて振り払うと、ナナミは私の後ろから出てきて私の横に立った。
「ユキが頑張って、だってさ!」
「そんな事言ってないでしょ!」
ナナミの馬鹿。
グラウンドにいる人、皆こっち見てるじゃん。
私は恥ずかしくてしょうがなかった。
ケイタはこっちを見ながらにこにこしている。
私はケイタに向かって、早く行けって手で合図した。
ケイタは小さく手を振って、ボールを蹴りながら走っていった。