――春。
新しいクラス。
新しい環境。
新しい友。
そしてはじまる、非日常が――。
チリリリリリン。
「…んっ」
けたたましく鳴る目覚まし時計を手探りで止める。
それは毎朝行われる儀式じみた動作。
でも今日は不思議と苦痛には感じなかった。
それは何故か…。
それは新二年生最初の朝。
そして同時に妹の入学式である。
これからは同じ学校に通うことになる。
いやがおうにも気持ち新たになるものであろう。
こんなに目覚めがいいのはいつぶりだろう。
「…なんて素晴らしい朝なんだ。朝日が俺を祝福してくれているかのようだ。この…」
馬鹿なことをやってないで支度しよう…うん…。
この日ばかりは気持ちの切替も早い。
「よしっ。こんな素晴らしい朝だ。結(ゆい)にも分けてやろう!この晴れやかな気分を!」
うーん、我ながら良い兄だ。
そうと決まれば早足で妹の部屋へ。
トントン。
一応しておく。まぁ単なる通過儀礼でしかない。
ドアを開け放つとベッドに仰向けに寝てる妹がいた。
スゥースゥー。
規則正しい呼吸がここまで聞こえてくる。
それに合わせて微かに胸も上下する。
「ダメだぞー。入学式早々そんなに怠惰では…ん?」
よく見てみると妹のベッドには丁度ひと一人分入れるスペースがあるではないか。
「フッ」
何を思ったかベッドに突入してみる。
布団から顔を出した直後…
もぞり。
半眼の顔がこちらを向いていた。
「やあ、おはよう結。良い朝だぞ!こんな朝は早く起き…」
「おい貴様」
爽やかな朝の第一声がそれですか。ちゃんと教育しなくては。
「おいおい兄に向かってその言い方はないだろ。もっとこう兄に対し…」
「貴様、何故わらわのベッドに寝ておるのだ」
だから貴様って…。まぁいいか。
「…え?そりゃあもちろん可愛い妹のためにわざわざ起こしにきたんじゃないか」
もちろん爽やかに答えた。