「将樹の出番、何時頃なのかなー」
二人で寒さをしのぐために腕を組んで夜の繁華街を歩いているとお姉ちゃんがそう呟いた。
「え?聞いてないの?」
私が聞くと、お姉ちゃんはちょっと舌を出した。
「実は今日行くこと将樹に内緒なんだよね。『来たって楽しくないよ』っていつも拒否られるから。」
「何かそれって…」
将樹さん浮気してんじゃない?と思ったけど口に出すのはやめた。
二人で繁華街の裏路地へ入ると、そこはクラブや中古レコード店やバーがぎっしり軒を連ねていた。
酔っぱらいのサラリーマンがウヨウヨしていた表の路地とは打って変わって、裏路地はおしゃれな雰囲気だ。
どこかの店からJAZZの音楽が路地にまで漏れてきて心が癒される。
行き交う人たちはお姉ちゃんくらいの世代の人たちばかりで、みんなおしゃれ上級者だらけ…
なんか自分がダサく感じてきちゃって帰りたくなってきた。ハァ…
「ここ!」
急にお姉ちゃんがあるビルの前で立ち止まったから腕を掴まれていた私は後ろに倒れそうになり「デフッ」と変な声が出た。
もうやだ、私ダサすぎ。
道脇にクラブの名前がライトアップされていた。
『pleasure』
そのクラブは地下にあるらしく、看板の脇にあるレンガ造りの階段を下った。