階段を降りている途中で、店の中から音楽が聞こえてきた。
中はかなりの大音量なんだろう。私はなれない状況に気を引き締めた。
お姉ちゃんが二人分のチケットをヒゲの生えた受付の男の人に渡す。
「おぉ、マサの彼女じゃん!珍しい。」
ヒゲ男とお姉ちゃんは知り合いみたいだ。
「将樹には内緒にしてて。何時から回すの?」
お姉ちゃんはドリンクチケットをもらいながらヒゲ男に聞いた。
「確か……最後から2番目じゃなかったかな?」
「そっか、まだだいぶ時間あるね。サンキュ」
と、お姉ちゃんが言うとヒゲ男は私を見た。
「はじめましてだよね?友達?可愛いね。」
「えーと……」
私が返事に困っていると、
「ダメ。私の妹だから。」
お姉ちゃんがヒゲ男の興味を手でシッシッとあしらってくれた。
店の奥へ行くと、大音量の音楽がこれでもかとホールの隅々まで空気を震わせている。
重低音が床を揺さ振って、振動がくるたび床にぬめり込んでいる感覚になる。
初めは音量のデカさに耳を塞いだがすぐに慣れ、フロアを見回す。