将樹さんの片付けが終わり、レコードの入った大きなバッグを斜めがけにして私たちのほうへ来た。
「おまたせ。じゃ、行こうか!」
すると将樹さんと私たちの横を、旅行カバンのような大きなバッグを持ったニット帽の男が通り過ぎた。
ニット帽は「おつかれしたー」と将樹さんに軽く会釈し、通り過ぎる瞬間に私と目が合った。
アーモンド形の目に鼻筋が通ったキレイな顔だった。
「おー!気を付けて帰れよ!」と将樹さんが言った。
私が振り返ったときには彼はもう居なかった。
私たちは地下から路地へ出る。少し疲労感が増した気がした。
もう朝方なので空は少しだけ明るさを取り戻し、名残惜しそうに星が輝いている。もうすぐ冬なので少しヒヤっとする。
私たちは朝マックすることにした。将樹さんの奢りで。
「どうだった?クラブデビューは?つまんなくなかった?」
将樹さんが聞いてくる。
私はハンバーガーを頬張りながら、
「楽しかったです!とくに最後にかかった曲好きでした。あれ何て曲か知ってますか?」
「あれはあいつのオリジナルだよ。良かったでしょ?マジあいつ高校生のくせに天才的だから。」