伸「…秋ちゃん…?!」
秋「…!」
小さなマンションの階段を上ってすぐ目の前に伸昭の部屋の扉が見える。しかし、今日は扉は開いていて、その前に伸昭と百合の姿があった
「伸昭…?」
伸昭と秋奈の顔を交互に見る百合の声に、秋奈ははっと我にかえった
秋「あ…その…さ、さよなら!!」
伸「秋ちゃん!」
階段を一気に駆け下り、気づいた時には知らない場所まで来ていた
* * *
(泣くな!泣くな泣くな泣くな!!泣く必要なんかないやん!あーあ、でも結局またうちだけ一人…。ううん、聖二も拓朗も彼女居なくても、頑張ってるやんか!!(←失礼)でも…聖二はちゃんと目標があって、拓朗も最近何かを見つけたみたいやし…うちだけ何もない。このままなんとなく生きて死ぬんかな。…いいな、光希は…夢も恋も手に入れて…)
――何の苦労もなしで叶えられたわけじゃないって翼もわかってるでしょ――
(そうだよ。光希だって頑張ったんや。…でも、うちだってやっと居るべき場所、見つけられた気がしたのに………ううん、違う。そうじゃない)
伸「秋ちゃーん!!」
(見つけたのは“居るべき場所”じゃない。そうや、うちが“居たい場所”や)
秋奈の瞳に息を切らした伸昭が映った