「……携帯番号とかアドレスとか書いてあるかと思った」
昼休み、梨沙子が満にメールしたが、返事が返ってこないままだった。
私は呟いた後、フッと笑った。
「私って調子いい女。」
棚の上にあるコンポにCDをセットする。
再生ボタンを押すと、クラブで聴いたあの曲がゆっくり流れだす。
やっぱ良い!すっごく!
私は音楽に耳を傾けながら小説を読みはじめた。
しばらくして曲が変わった。知らない曲。
「あ、他の曲も入れてくれたんだ…」
今度はギターがベースのシックな曲調だ。
これも私のストライクゾーンに易々と入った。
「明日、梨沙子に頼んで満にお礼を言ってもらおう」
* * * * * * * * * * * *
次の日、朝から梨沙子に話しかけると梨沙子がバツの悪そうな顔で先に話し始めた。
「昨日の夜ね、満からメールの返信あったんだけど…。」
私は満の名前に胸が高鳴った。
「なんか…、満ね…
最近彼女出来たんだって。」
「え?」
私は一瞬グルンと目の前が回ったように感じた。
「だから紹介してあげられなくなっちゃった。ごめんね。」
梨沙子は目の前で手を合わせて謝っている。