「…だ、大丈夫!気にしないでよ梨沙子。私、曲が好きなだけだから。」
私は必死で気にしてないフリした。
でも心の中はかき乱された。
一瞬だけ恋をしていたような気がする。そして今、最速で失恋したような気がする。
これ以上凹みたくなくて、梨沙子に昨日のCDのことを話すのをやめた。
彼女いて当たり前だよね。
一時間目の授業が始まるチャイムが鳴る。
少し肩を落としながら自分の席に向かう。
後ろの席のビン底眼鏡と目が合う。
眼鏡の度がきつ過ぎて目が小さくなっていて顔のバランスがすごく悪い。
……う、キモい。
何もない日常に戻ったという現実を突き付けられた気がした。
席に着くと教科書とノートとペンケースを用意する。
ペンケースのチャックをそっと開けると、昨夜テンションが上がって入れてしまったメモ紙が入っている。
「はぁ……ダサい私…。」
結構ダメージがデカく、頭をかかえる。
でも、とにかくお礼は言いたい。けど、梨沙子にはもう言えない。
将樹さんから伝えてもらおう…
私はノートのページを1枚破り、お礼の手紙を書き始めた。