次の日から、私の背中には目がついてるんじゃないかと思うほど、後ろの席の綾川くんを気にしている。
プリントを後ろへ配るときもいつもより緊張している。
だって、「もしかしたらこの人があのたくさんの素敵な曲を作ってるのかもしれない!」と思うと、いちファンとしては興奮する。
プリントを渡すとき、チラっと綾川くんの手を見る。
大きいわけではないけど、指が長くてゴツっとしてる。
今まで気づかなかったけど、黒いメタリックでおしゃれな腕時計をしている。
そんな『ミツル』に結び付きそうなモノを少しずつ見つけるごとに胸が高鳴る。
* * * * * * * * * * * *
「確かクラブの帰りにミツルと私は目が合ったよね。綾川くんなら私だって気づいてたのかな?」
ミツルからもらったCDを聴きながら勉強中、ふと冷静になりそう思った。
でも綾川くんの態度はとくに変わらなかったし、気づかなかったのかな?
そもそも何であんなダサい眼鏡かけてんだろう。
疑問が次々と湧き始める。
頭の中は『ミツル』と『綾川くん』を繋げる証拠探しでいっぱいだ。
ペンケースの中には『ミツル』からのメモ紙が大事に保管されている。