10分ほど経つと、また携帯の着信が鳴った。
『え!?同じ高校生?じゃあ、タメ口でいいかな?すごく大人っぽかったから社会人だと思ってた。でも何となく自分のクラスメイトに似てたから、あのときガン見してたかもしれない。でも違ったみたいだね。すみません。曲のタイトル好きに付けてやってください。そして俺にも教えて。』
……!?
このクラスメイトって私のこと……だよね?
綾川くんは『ミツル』だと確信した私は、すぐに自分が偽名を使ったことを後悔した。
そういえばクラブ行った翌週の月曜日、よくビン底眼鏡の綾川くんと目が合っていた。
彼もまたあのときクラブで会った子が私だったんじゃないかって気にしていたのかもしれない。
確かめようとしてくれていたのに、私は「キモい」とか思っちゃって……
「最悪だ、私…。」
今さら『やっぱり私は槇原菜々子です』なんて言えなくて、私はユキになりすましてメールを続けた。
胸の奥がギューと掴まれるような感じがした。
「ごめんね、綾川くん」
携帯に向かって謝った。