昼間は話したこともないただのクラスメイト同士、夜はメールで音楽について語り合う。
こんな奇妙な関係がしばらく続いた。
綾川くんは私がユキになりすましてるなんて、思ってもいないだろう…
今までの日常に比べれば毎日が刺激的で楽しい。
とくに昼間の綾川観察はハマってしまってる。
今まではビン底眼鏡とねぐせ頭しか目に入っていなかったが、眉は太くも細くもなく自然な形で整っている。鼻もすっとしている。
制服も少しサイズが小さめのものを着ているが、手首から少しのぞくカッターシャツの袖と腕時計のバランスが程よく、おしゃれ上級者のなせるワザだ。
ベルトも革で金具部分がシンプルだけど、品がある。
なんで今まで気づかなかったんだろう……
嘘の名前を名乗ってメールしていることに段々と罪悪感を感じ始めてる反面、綾川くんの格好良さを自分だけが知っているという優越感があった。
そして、私が騙してたことがバレたら綾川くんが怒ってしまうんじゃないかと心配になる。
なるべく学校では綾川くんに近づかないように、気づかれないように気を付けていた。
だが、それもある日の放課後までだった。