「……あ、槇原さんか。誰かと思った。」
おぉー!!
生ミツルと初会話!
と、興奮する私。
「あはは。結構近づかないと人の顔認識できない?」
調子に乗ってさらに話しかける。
「うん、すっごい近視。ほら眼鏡もすごい度が入ってるし。」
綾川くんは少し笑いながら話を返してくれる。
あぁ、眼鏡外して笑ってる顔が見たい。
私は心底そう思った。
「ほんと度がキツそう。ちょっと外してみて。」
私は我慢できなくて気づいたらそう言っていた。
「え?」と、動揺してる綾川くん。
「眼鏡。貸して。」
そう言って綾川くんの眼鏡に手をかけようとすると、腕に挟んでいたペンケースを落としてしまった。
ペンケースのチャックは開いたままだったので、中身がバラバラと私たち二人の間にこぼれた。
……あ、ヤバい。
ミツルからもらったメモ紙を入れたままだった。
目の前の綾川くんがゆっくりと屈んでこぼれ落ちたペンや消しゴムを拾ってくれる。
急いでメモ紙を拾おうとしゃがむと、
……時すでに遅し。
綾川くんがメモ紙を手にしていた。
「……これ」
綾川くんがボソっと呟く。
私の頭は完全に思考停止した。