……好きだ
好き、好き、綾川くんが…好き。
涙がジワっと滲み出る。
メイクが落ちちゃう…。
すでに曲も何曲目かわからない。
私は涙を我慢できなくなって、トイレに行くフリをしてロフトを下りた。
防音扉を開けて外へ出ようとすると、知らない男に声をかけられる。
「もう出んの〜?もうすぐカウントダウン始まるよ〜?…一緒にしようぜ〜!」
と肩に手を置かれる。
私はゾワゾワっと悪寒がした。
男からはアルコールの臭いがプンプンする。
「ちょっと…やめっ」
私が肩から男の手を離そうとすると、会場内が真っ暗になった。
ステージ上のスクリーンにカウントダウンの数字が大きく浮かび上がる。
「ほらぁ〜、始まったよ〜」
男は私の腕をひっぱりフロアに連れて行こうとする。
MCの人が大きな声でカウントダウンを始めた。
会場のみんなもそれに合わせてカウントダウンを始める。
私の腕は酔った男に掴まれままで、離してくれない。
『…7!6!5!…』
もう無理…
我慢していた涙が溢れてきた。
そのとき、私のもう片方の腕を誰かがグッと掴み、そのまま引っ張られた。
『……1!』
それと同時に防音扉が開き、外へ連れ出される。