扉が閉まる瞬間、会場の中から『Happy New Yeeeaaaaar!!!!!』というMCの声とワァー!という歓声が聞こえた。
「……綾川くん?」
腕を掴まれたままレンガの階段を二人で上っていく。
路地へと出る。
雪は止んでいた。
「………ヘクショ」
つないだ腕と逆の腕を口元にあてるようにして綾川くんがくしゃみした。
「綾川くん!Tシャツのままじゃん!!」
涙なんて引っ込んだ私は繋がれた綾川くんの腕を引っ張り返し元来た道を戻ろうとした。
……グッ
綾川くんは動こうとしない。
向こうをむいたままで表情がわからない。
ステージ上が相当暑かったのかしっとりと汗をかいている。
「ね、風邪ひく前に中入ろう?」
なぜか沈黙の綾川くんをなだめるように店内に戻るよう促す。
「………ハァァァ」
いきなり大きなため息をつき、その場にへたり込んだ綾川くん。
腕が掴まれたままだったので、引っ張られ一歩綾川くんに近づく。
すぐ下に綾川くんの頭のてっぺんが見える。
「…生まれて初めて人殴りそうになった…。」
綾川くんがボソッと呟く。