「え?」
私が聞き返すと、「何でもない」と言ってそっぽ向く。
「………。」
また沈黙…。
何なのコレ…
私、なんで泣いてたっけ?
………!!
私は重大なことに気づいた。
「綾川くん!ライブ中じゃない??」
私が掴まれた腕を引っ張ると、パッと手を離された。
綾川くんは両手をあてて顔を覆う。
「……大丈夫。さっきので俺の出番終わりだから。」
あ、そうなの。
「…………。」
また沈黙。
「とにかく中入ろうよ。」
「……槇原さん、さっき途中で外出ようとしてた。」
綾川くんがようやくこちらを向いた。
道端に座ったまま、こちらを見上げている。
「……えーと。外の空気を吸おうと思って…。」
「カウントダウン前に?」
……うっ
私が黙ると、綾川くんはゆっくり立ち上がり「ダウン取ってくるから待ってて」と言って店に戻っていった。
階段を下りていく後ろ姿を見送ったあと、今までの緊張の糸がプツリと切れた。
「何もぅ〜…。」
頭を抱えてうずくまった。
さっき綾川くんへの恋心を強く自覚した私は、ドキドキする心臓をコントロール出来ずにいる。