白いマグカップに注がれたホットココアを受け取り、フーフーと息をかける。
一口飲むとお腹の底まで温かくなる。
飲み終わる前からヤスさんの質問攻めが始まった。
「名前は?」
「槇原です。」
「下の名前は?」
「菜々子です。」
「高校生?」
「はい。綾…、充くんと同じ高校です。」
「ミツルの彼女?」
「「!?」」
ブッと隣の綾川くんがコーヒーを吹き出した。
「彼女?」
繰り返し質問するヤスさん。
「……ち」
「違うよ。」
私より先に綾川くんが答えた。
本当のことなのにチクリと胸が痛くなった。
「菜々ちゃん、DJとかチャラチャラした奴に捕まったらダメだよ。あいつら女癖悪いからさ。」
ヤスさんは口元に手をやり内緒話をするように、でも綾川くんに聞こえるくらいの声で言った。
綾川くんはコーヒー片手にこちらを見て笑っている。
…あ、やっぱカッコいい。
「じ、じゃあ!将樹さんも浮気したりしてるんですか?」
綾川くんの甘い笑顔に根負けし、ヤスさんへ目を戻す。
「あー、マサはねー。あいつはモテるけどアホだな。」
「マサさんは大丈夫だよ」
綾川くんがそう言った。