――光『えー!また秋奈、拓朗ん家に戻っちゃったん?』
電話の向こうの光希の声が高くなる。一方、拓朗は、1LDKの狭い家の中で、秋奈の耳に届かないように一層声を低くした
拓「…いや、なんかへこんでるっぽくて…」
光『大丈夫?うち、行こうか?』
拓「いや、大丈夫っす!汗(今の秋には会わせん方が…)」
光『聖二は?』
拓「あ〜…」
拓朗が振り返ると、拓朗のベッドの傍であぐらをかいて座る聖二と目があった
拓「せぇちゃんも行かんって」
電話をきると、拓朗はベッドに近付いた。
拓「秋?腹減ってへん?」
丸くなった布団が微かに動いたが返事はない。拓朗の隣で聖二が小さくため息をついた
拓「俺、なんか食うもん買ってくるわ」
聖「ごめん、ありがとう」
拓朗が出ていき、さらに静かになった2人きりの部屋。しばらくしてようやく秋奈がゆっくりと体を起こしたが、聖二は何も言わない
秋「…ごめんなさい」
意外に思ったのか、秋奈がようやく発した言葉に聖二は目を丸くしていた