拓『まあ、そうへこむなって』
濡れた髪から伸昭の頬に滴り落ちる雨粒
電話の奥の拓朗の声がやけに穏やかに聞こえ、ますます自分のふがいなさを思い知らされるような気がした。
伸「でもやっぱ俺あかんわ」
拓『何で?』
伸「今日も、泣かしちゃってんもん。俺じゃあかんわ」
拓『弱気になんなよ』
伸「無理無理。どうせ、あれでしょ?俺みたいな軽男のせいで傷ついた彼女を男友達が慰めて、“そっか、私にとって1番必要だったのは彼だったんだ!”、“彼女を救えるのは俺しかいない!”ってなって2人がうまくいってめでたしめでたしってなんのがどうせオチでしょ?それがよくある恋愛話でしょ」
拓『ちなみにその男友達って(-_-;)?』
伸「そりゃ、聖二君やろ。どうせ今頃…」
拓『あー!!!!』
拓朗の突然の大きな声に今度は伸昭が携帯を耳から離した
伸「何、突然」
拓『ごめん…今、秋とせえちゃん、2人きりで家に残して来ちゃったわ…(-_-;』
伸「ほら、まさにさっき言った展開やん(-_-)」
拓『ひねくれんな!伸昭!まだ分からんやろ!とりあえず俺帰るから、じゃあな!!!』
さっさと一方的に電話を切られ、伸昭はため息をついた
相変わらず雨が伸昭の髪を濡らしていた