「違うよ。」
気持ちを落ち着かせるため少し深めに呼吸をした。
「メールしなかったのは恥ずかしくて…、さっき出ようとしたのは………なんか…綾川くんが遠い存在な気がして…」
「遠い存在って?」
綾川くんが聞いてくる。
「えーと、世界が違うっていうか…」
「なんで?」
また綾川くんが聞いてくる。
「…だって、綾川くんは大人っぽいし」
私はマグカップの口を親指で触りながら話す。
「……大人?」
綾川くんは全く私の話す内容が理解できないらしく、オウム返しのように聞いてくる。
誤解を早く解くために私は綾川くんを見て言った。
「とにかくッ!!私は綾川くんの作った曲大好きだから…、飽きたとか1ミリも思ってないよ。」
綾川くんはこちらを見ずに口に手をあてて向こうをむいたまま固まっている。
「…誤解させてゴメン」
私が謝ると、耳を赤くした綾川くんがテーブルに突っ伏し、「ありがと…」と呟いた。
ガタァァァーン!!
「ミツル!!はぁ、はぁ……やっと見つけた!お前コールかかってる!早くハコに戻れ!」
突然店のドアを開け、イベントスタッフが走り込んできた。