拓「ほんまは、“秋やから”放っとけないんやないん?」
聖「…」
拓朗を見つめる聖二の鋭い目。その目にも怯まず、拓朗は言い切った
聖「…はあ…またそれかよ。しつこいって。何を今さら…」
しばらく沈黙を交わした後、聖二は大きなため息をもらした
拓「だったら何で秋の相談事を他の奴にまわすようなことすんねん。らしくない」
聖「俺はどっかの恋多き野郎とはちゃうからな。俺みたいな奴に相談しても、適切なアドバイスなんか出来ないって思っただけやってば」
拓「いつもならそれでも聞いとったやんか」
聖「いつものはただの愚痴だったからだよ。でも…今回は違う。あいつのことを思って冷静に答えただけや。……別に、あいつの恋愛話が聞きたくなかったわけじゃない」
しまった、と思った。気付かれないように、また自分自身も気付かないように、聖二自身がずっと無視し続けていた気持ちに、拓朗は土足で入り込んでしまった。
――今さら、今の状態から抜け出されへんの、もう――
聖二のその表情を見て、拓朗はいつだったか美弥が言った言葉を思い出していた