年が明け、3学期がスタートした。
「あけおめ、菜々子」
「あ、梨沙子。今年もよろしくね。」
「ちょっと彼氏のとこ行ってくるねー」
そう言って梨沙子は隣のクラスへ行った。
私は自分の席に座り、カバンの中身を机へ入れる。
綾川くんはまだ来てない。
年越しの夜。
ライブ会場に戻ったあと、すぐに綾川くんは他の人に囲まれてアンコールに答えてステージに上がったままで、私は結局お姉ちゃんと将樹さんと帰った。
そういえば、手つないだなー…
なんて思いながら机の上に肘をつき自分の手を眺めてニヤニヤしていた。
……カタ
後ろの席にカバンを置く音がして振り返った。
眼鏡の綾川くんだ。
「…お…おはよ」
私が挨拶すると、眼鏡の奥の綾川くんの目が少し開いた。
「はよ」
綾川くんは少し笑って席につく。
私は初めて挨拶できた喜びでヘラ〜と笑った。
綾川くんはコホンと咳払いし、小声で「この前ごめん」と言った。
私は嬉しくてブンブンと首を横に振った。
「楽しかったよ!ヤスさんの店とか…」
「槇原さん。いいの?」
私の話を遮って綾川くんが意味のわからない質問をしてきた。
「ん?何が?」
綾川くんは目だけをチラっと周りに向ける。
私も真似して目だけで周りを見た。