綾川くんは膝に肘をつき軽く両手を合わせて前かがみの状態で座った。
「今日用事ある?」
綾川くんが覗き込むようにこちらを向いた。
バチッと目が合ったものの恥ずかしさですぐ逸らしてしまった。
そのまま下を向き「ない」とだけ答えた。
「そっか。」
私は綾川くんに対して「あの子らとカラオケ行くんじゃないの?」「なんでバス停に来てるの?」と、いろんな質問が思い浮かんだが、なんだか彼女でもないのにそんな質問しちゃだめな気がして言葉を飲み込んだ。
「なんか最近あんま話さなくなったね、槇原さん。」
「えへ、そっかな?綾川くんに話しかけるタイミングなくて…、ほら…最近モテてるし…」
しまった。今の言い方ひがみっぽい。ヤキモチ焼き丸出し。
隣に綾川くんがいて嬉しいけど、自分のヤキモチによるドロドロした感情が口からポロポロ零れそうになる。
だから黙ることにした。
「あぁーーー…」
いきなり綾川くんがため息のような声を出したのでビクっとした。
頭を抱えて何か悩んでるようだ。
「あー、槇原さん…、
ちょっと、
手握ってもいい?」
「?!」
何を聞かれたか理解出来ずに綾川くんを見ると、
私の返事も待たずに私の手の甲に自分の手のひらを置き、キュっと握ってきた。