私は突然の出来事に驚き硬直する。
綾川くんが手を握ってる。
ここはバス停で他にも生徒がぞろぞろと集まってきてる。
私たち二人の繋いでいる手はみんなに見えない位置にある。
心臓が手に移動したみたいに、血流が早くなった。
「ど、どうしたの?」
私が聞くと、綾川くんは答えずにさらに強く手を握った。
しばらくすると「ごめんね」と言って手を離された。
ちょっと名残惜しかった。
「俺今からヤスさんとこにレコード借りに行くけど一緒に来ない?」
思わぬ誘いに心が踊った。さっきまでのドロドロした感情はもうなくなっていた。
「………行く」
「じゃ、バスじゃなくて電車だから。行こ。」
そう言って立ち上がった綾川くんの後ろを付いていく。
バス停で待っている生徒たちの間を通ると、
「あの二人カップル?」
「お似合いじゃない?」
一年生らしき女子生徒たちがコソコソ話しているのが聞こえた。
私は嬉しくて顔が赤くなったのを隠すように歩く。
綾川くんにも聞こえたはずなんだけど、前を向いてて表情が分からない。
……いやじゃ、ないよね?少しは私も期待していいよね?
そんなことを考えながら駅まで歩いた。