「今日は楽しかったね!」
楽しかったのはナナミたちでしょ……もう。
なんか疲れが増したような気がする。
「じゃ、私たちこっちだから」
「あ、うん。じゃーね」
分かれ道でナナミとマサトが歩いてく。
2人の後ろ姿を見送ったあと、私は2人とは別な道を歩き出した。
「今日、楽しかったね」
そういえば、ケイタと帰り道一緒だった。
ナナミと同じこと言わないでよ。
心の中でそう毒つく。
「ユキは楽しくなかった?」
返事を返さない私に、ケイタは顔を覗き込むようにして聞く。
「うん、全然。ってか、ナナミとマサトがいて気まずくなかった? それなのに楽しめるって凄いね」
ちょっと皮肉っぽく言ってみる。
「ユキがいたから楽しかったよ」
何、言ってるんだろ、この人。
サラッと言うから、一瞬ドキッてしちゃったじゃん!
顔に出しちゃダメ、顔に出しちゃダメ。
こんな奴にときめいちゃダメなんだから!
「何言ってんの。バカ?」
「えー、ひどーい」
「酷くないでしょ」
私は鼻で笑った。
「あ、そーだ! ユキにプレゼントあげる」
「え?」
ケイタは持っていた小さな紙袋を私に差し出す。
その紙袋には最初に立ち寄ったあのアクセサリーショップの名前がかかれていた。
「開けてみて」
促されて、私は紙袋から細長い箱を取り出してふたを開けた。
中に入っていたのは、私があの時見ていたネックレスだった。
私はそれを見ると、すぐにふたを閉めて紙袋と一緒にケイタに突き出す。
「う、受け取れない」
ケイタから貰うわけにはいかない。
ケイタから貰いたくなかった。
「いや、貰って! 俺の気持ちだから」
ケイタはそう言って紙袋と箱を押し返す。
私がこれ欲しそうにしてたの見てたのかな。
でも何だろ……嬉しい。
「……ありがと」
「絶対似合うと思うよ」
少し、ケイタを許せるよーな気がした。