翌日、学校から帰って来たユウが俺とユキエの前で見せたのは、
ボロボロになった制服に身を包み、先日作った傷よりも、更に酷い傷を負った、
おそらくは、何者かにボコボコに殴られたと思われる顔であった。
『ユウ!!一体どうしたの?!その顔は?!』
先日、俺とユウが殴られて帰って来た時のユキエのリアクションは、意外にもあっさりとしていたと思う。
それだけに、今のユキエの大袈裟とも受け取れるその驚き方は、ユウの傷の酷さを物語っていた。
『同じクラスの奴にやられたのか?!』
俺もユキエに口添えする。
『ああそうだよ。オヤジと母さんのおかげでさ。』
ユウは、昨日俺とユキエの取った行動が正当であると、多少は理解してくれているとは思うが、
果たして本当にその行動により、良い結果が生まれるのかと問われると、断言するのは難しいという今のこの状況の中で、
少し嫌味を込めていたのであろうが、素直に返事をしてくれた。
『俺がマザコンて事になっててさ。
母さんがクラス全員の前で話したからだろ?』
確かに、イジメなんて物は、いつの時代にもある。
しかし、昔と違い、その傾向は、どんどん陰湿になっている。
しかも、いつ誰がその対象になるかも分からない。
つまり、誰にでもその対象となりうる可能性はあるのだ。
現に、ユウもこれまでイジメに遭った事など、一度も無かったのだから。
俺達がユウに良かれと思って取った行動は、本当に正しかったのか。
昨日までの自信が、今日のユウの顔を見た瞬間から、少しずつ失われていくような気がした。
無論、その結論を今すぐ出すのはとても難しい事だった。
『ユウ。その顔は誰にやられたんだ?!』
失われつつある自信の後に湧き出て来たのは、どうしようもない程の怒りだった。
『同じクラスの秋場と金田だよ。』
傷口が酷く痛むのだろう。ユキエに手当てをしてもらいながら、ユウは口を開く度にしかめっ面をした。