01.
辺りは真っ暗な闇が広がっている。
その闇の中で少年は、辺りを見回しながら歩いていた。
どれくらい歩いただろう。
歩いても歩いても、先に広がるのは闇ばかり。
誰もいない、闇。
「ケイゴ」
後ろから、自分の名前を呼ぶ声が聞こえてきた。
懐かしくて、心地よい声だった。
少年、ケイゴが振り向くと数メートル離れたところに光が集まっていて、そこには父と母の姿があった。
「父さん! 母さん!」
ケイゴは嬉しそうに叫んで、走り出した。
しかしケイゴがいくら走ろうと、父と母のところにたどり着くことができない。
すると父と母はケイゴに背を向けて、光の中へ歩き出した。
「行かないで!」
聞こえていないのか、父と母は止まることなく歩みを進める。
父と母の後ろ姿が光に消えようとしていた。
「いやだ。行かないで……。父さん! 母さん!」
ケイゴがそう叫んだ時には、父と母の姿は光に消えていた。
「父さん、母さん!」
ケイゴは勢いよく起き上がると、今まで見ていたものは夢だと気づく。
今ケイゴの目の前には闇ではなく、白壁が広がっていた。
そこはベッド1つしか入らないほどの広さの部屋だった。
(ここ、どこ?)
窓がないため外の様子を見ることができなく、何の音も聞こえない。
何で自分はこんなところにいるのかと考えてみたが、全く思い出せない。
それでも思い出そうとしているとドアが開く音がして、ケイゴは弾かれたようにドアの方を見る。
ドアからはケイゴと同じ年くらいの金髪の少女が顔を覗かせ、ケイゴを見た瞬間目を見開いてすぐにドアを閉めて去っていった。
(誰……あの子)
あの子に話を聞けば、ここがどこか分かるかもしれない。
そう思ったケイゴは少女の後を追おうとベッドから下りようとした。
「うわっ!」
床に足をついた途端、足に力が入らずケイゴは床に倒れ込む。
起きあがろうとしたが腕に力が入らない。
その時ドアが勢いよく開いて、1人の女がずかずかと部屋入ってきた。
「何してんだよ」
その女の声は、いつかに聞いた声と似ていた。