事故のことははっきり覚えていない
気付いた時にはトラックしか見えなくて、近づいたらぐったりしたあいつがいた。すぐ救急車が来た。そして、あいつを助けるためには―――
拓朗の話に秋奈はあの電車の中で聞いた事故の話を思い出していた。あの事故の怪我人こそ翼だったのだ
誰もが言葉を無くした
時計の針の音だけがやたらと響く長い沈黙の後、その静けさを破ったのは波音だった
声をあげて泣き出しそのまま猛に飛び込むように抱きついた。猛は聖二に視線を送ると波音を子どものように抱きかかえて部屋を出て行った
聖「…翼は?」
美「まだ…知らない」
拓「今日俺と美弥で話そうと思う」
ち「…ギター…もう弾けないん?」
拓朗は何も言わず下を向いた
秋「…うちらに…出来ることってないんかな」
光「うちらに…?」
聖「俺らに出来ることなんかねぇよ。何かしたところで何も…」
秋「簡単に決めつけんといてや!」
聖「じゃあ何が出来んの?腕、治せんの?それとも、励ます?そんな単純な…」
秋「じゃあ何もせんとほっとくん?聖二のそういう決めつけるとこ大嫌い!!」
拓「秋!!」
伸「秋ちゃん!」
2人の声にも振り返らず秋奈は出ていった