教師恋愛中毒(7)

ハル  2005-12-16投稿
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「椎矢!!」

今まさに校門を出て行こうとするななを呼び止める。
彼女が振り返る。

なのに僕は何も言えない。

虚しいくらい言葉が見つからない。

ななは首を傾げる。

「先生?何ですか?」

まだ何も言えない。
確信したわけじゃないから。

彼女が【虐待】にあってるんじゃないかという。

「き・・・気をつけて帰れよ。」
「?・・・はい。」

どうしようもない歯痒い気持ち。

職員室に戻った僕は彼女の家に電話をかけた。
3回目のコール音ですぐに女の人の声がした。

若い。

「はい?」
「高校でななさんの担任をしてます、な・・・。」
「ちょっと待って。なな呼ぶから。」
「いえあの・・・。」
「何です?」

僕は冷たい電話越しの女性の声に少し戸惑う。

「お母様でしょうか?」
「まー・・・どうだかしんないけど。そうじゃない?立場的に。」

とげのある口調。

「ななが何かしたんですか?」
「いえ、あの。」

聞いていいんだろうか。

「ななさんの身体にある傷の事なんですが・・・。」
「あぁ。あれ?あれは別に。あたしがやったんだけど、何か?」

あまりにもあっさりした言葉。

「あれはうちの育て方なんだから何も言わないでくれる?」
「・・・。」
「あたしも大変なのよ。アイツ、別にあたしのコドモじゃないしぃ。」
「失礼・・・しました。」

僕は次の言葉を聞くのが怖くて電話を切ってしまった。

受話器を置いた手が震えた。

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