その日、ケイタが学校に来なかった。
まあ別に来なくていいんだけど、何か寂しいというか何というか……。
「ケイタくん、どーしたんだろーね?」
「さあ。サボりじゃね?」
ナナミとマサトがそんな話しをしてる。
電話かメールしてみようかと思ったけど、止めた。
そんなことしたら、アイツのこと心配してるみたいに思われるし。
アイツのことなんて、これっぽっちも心配してないんだから!
その時、私の携帯から着信音が鳴った。
「……アイツからだ」
「え。ケイタ?!」
「どこにいるのか、聞いてくれよ」
電話に出たくなかったけど、出ざるを得ない状態になっちゃった。
私は通話ボタンを押して、携帯を耳にあてた。
「もしもし。あんた今どこに───」
「……け、て」
「え? 何?」
いつものケイタの声より、低くて小さい声だった。
「たす、けて……」
その言葉を聞いたとき、私は無意識に机の横にかけていたカバンを掴んで教室を飛び出していた。
*
分かれ道を真っ直ぐ行ったとこの青い屋根の家だってケイタが教えてくれた。
ケイタの家に着いて、インターフォンを押して扉の前で待ってみる。
でも誰も出てくる気配がないから、私は扉を開けて中に入った。
中は誰もいなくて静かだった。
ケイタはどこにいるんだろう……2階?
「お邪魔します」
そう呟いて靴を脱ごうとした時、2階から咳き込む音が聞こえてきた。
階段を上がると、その咳き込む音は階段のすぐ近くの部屋から聞こえてくる。
ここがケイタの部屋なのかな。
私は戸をノックしてみた。
「ユキだけど……入るよ?」
部屋の中はカーテンが閉め切られてて暗い。
その暗くて静かな空間に、ベッドから聞こえてくる咳きの音だけが響いていた。