拓「…」
美「…」
1時間後、2人は病室に居た
重い空気の中、拓朗の声だけが響いて、結局美弥は一言も何も言わずに下を向いていた。一方翼も天井をじっと見つめたまま、瞬き一つしなかった。
彼から目を離さず拓朗は全てをはっきりと告げた。そして話し終えると、翼のどんな言葉も行動も、全て受け入れてやろうという覚悟でまっすぐ彼の横顔を見つめた
しかし―――
翼「…あはは!そっか!」
突然の笑い声に2人は耳を疑った
翼「そうかぁ〜腕なくなるなんてなぁ…あ、あれみたいやない?ほら、ムック…あれ?何やっけ?ピーターパンの…なあ、拓朗?」
拓「え…あ、あぁ…フック船長?」
翼「そー!それ!!俺も右手にあんなんつけよっかな〜ちょっとかっこよくね?」
拓「あぁ…そうやな!うん、目立ちたがりやのお前やったら、ぴったりやん!」
翼「ちょっと羨ましいと思ったやろ〜!あ、拓朗、俺の代わりにフックの手ぇ探して買っといてや!」
拓「…おう!探しといたるわ!その代わり、ちゃんと金払えよ」
翼「それくらいプレゼントしてや、てか売ってるもんなのか?」
拓「いや…知らん」
2人のやりとりの間、ずっと美弥は顔をあげなかった。
翼の笑顔に、拓朗は想像していた以上に胸が痛んだ