「よかった…。」
最初に感情を示したのはカズヒロだった。
「アキが死んじゃってたら俺…。」
泣くふりをするカズヒロを見ると、もう、ろう学校に行くことを決めたアキの心が痛む。
言うべきなのか…
言わないでこのまま…
「でもアキ、何で出かけてた?」
アキは、少し考えて、
『中学の友達と、買い物。』
…嘘だった。
本当は、ろう学校の校舎案内に行っていたのだ。
「そう、楽しかった?」
『楽しかった〜。』
満面のアキの笑みが、カズヒロを満足させたようだ。「明日から冬休みだな。…アキは学校…来なかったけど…でも元気そうで安心した。」
アキは、
『冬休み明けたら…行くつもりだったんだよ私。』
カズヒロは自然と笑顔になった。
「それなら心配無用だ…、あ、そうだ!」
『何?』
「時間ある?」
もう夜も遅いのに、私をどこまでつれ回すの。
アキは思ったが、カズヒロともっといれると思うと、少し嬉しいような気がした。
『あるけど…。』
「じゃあ…俺んち来てくれない?」
『いいけど…親とか怒るんじゃ…。』
カズヒロは、考えたふりをして、
「大丈夫。俺の家族みんな大らか。」
カズヒロは強引に手を引っ張った。
『そういう…意味もあるけど…。』
アキは手を振りほどいた。