第十九話 漸くの出番です。
テーブルの上に高く積まれた見合い写真を見て、計算冠咲香(けいさんかんむりさきか)は溜息をつく。
「はぁ・・・・何でこんなに・・・」
彼女は清美等六人の通う高校の教師で、一年生である陽子、漆美、由理香の担任である。
溜息をつく咲香を見て、兄に計算冠達哉(けいさんかんむりたつや)がこう言った。
「母さん、よっぽど孫の顔が見たいんだな」
「もう、兄さん他人事と思って!」
因みに、達哉も教師で二年生の清美、進美、光の担任である。
咲香はテーブルから見合い写真を片付けようと触ると、一番上の一冊が床に落ち写真入れが開いた。
咲香は落ちた写真を拾うとそこには、兄、達哉の写真があった。
「に、兄さんの写真が混じっている・・・・」
咲香は達哉に写真をみせた。
「嘘!?」
達哉も他人事ではなくなった。
気分転換に計算冠兄妹は猫空新開地商店街にある『レストラン偏』にて食事をしていた。
猫空屈指の有名店であるが価格が安いので入りやす店である。
「しかし、母さんは何時の間に俺の見合い写真なんて作ったんだ」
達哉が珈琲を飲みながら言う。
「私のも何時の間にか出来ていたからねゑ。解らないわ」
咲香は紅茶を飲みながら答える。
兄妹揃って見合いをする気は無いので、母のやり方に愚痴っていた。
二人は愚痴っていて気がつかなかったが横をヰヒが通過していた。
計算冠兄妹は家に戻るとリビングのテーブルに母親からの置き手紙があった。
『友人と買い物に行ってくる』
それだけだった。
「はあ、呑気な」
「全く」
兄妹は椅子に座り項垂れる。
少しすると達哉の目線がチラチラとする。
「兄さん、私のが気になってるのかな?」
「えゑ!」
咲香の胸は大きく、テーブルに乗っかっていた。
「私の胸見たいんだな!」
「おい咲香!」
時々咲香は達哉をからかう。
「前に事故とはいえ、一回触られてるしねゑ。」
「おゐおゐ、勘弁してくれ・・・・」
「いっそ、私達で子作りしちゃう?兄さんなら私はオッケー!」
咲香は頬を赤らめた。
妹のからかいに撃沈した兄だった。
第二十話に続く。
「ちょっと、私の出番ここだけ!」
清美の台詞が虚しい。