俺が秋奈に出会ったのは中1の春。なんとなく入った部活にあいつは居て、目があえばにっこり笑う、そんな奴だった。
やたらと部員の多い部で、会話する機会もなく数ヶ月が過ぎたころ、俺は思いがけず“穏やか”で“清楚”で“優しい”人気者の彼女の裏を知ってしまった
「…ウザい奴らばっかし」
誰もいない部活後の音楽室。忘れ物を取りに一人戻ると、その音楽室に秋奈が居た。彼女はそう呟いて丸めた楽譜を壁に向かって投げつけた。その瞬間を俺は目撃してしまったのだ。
ガタッ
こっそり忘れ物を取って出ていくつもりがうっかり机にぶつかってしまった
その音に彼女は振り返ってなんとも気まずい空気
「あ…ごめん。」
「…」
こんな彼女の冷たい目、見たことない
「えっと…そ、それじゃ…」
「別にいいよ。皆に言っても」
「…何…を?」
「本当の私は嫌な奴だって」
「別に…言わへんよ」
「何でそう言い切れんの?いつも人気があって完璧な人間が可哀想になるの、見たくない?幸せな人間が不幸なのって面白くない?」
「そんなの、興味ないし」
彼女はじっと俺を見つめてからくすっと笑った。誰も知らない、彼女が本当に笑った姿を俺はその時初めて見た