「おはよ、風香」
あれから澪は一緒に登校してくれるようになった。
「昼、屋上な?」
二言目にはこれ、すっぽかすとすごく怒るので忘れられない。
話し方もぎこちなさが消え、自然になってきた。
「あ、いいこと思いついた」
「何」
私が話しかけるとうっすらと笑みを浮かべてこっちを向くので、朝から顔が赤くなるのを感じた。
「風香?」
澪が名前を呼んでくれなければ思いついたことを忘れるとこだった。
「アハハ、ごめんごめん。えっと・・・」
私が話し始めると興味深そうに澪が顔をのぞき込むので緊張して声がうわずった。なぜ、歩きながら自分より背の低い私の顔をのぞき込むという器用なことが出来るのだろう?
「私、が、澪の、お弁当・・・作って、あ・あげる・・・」
非常に小さな声で話したため澪に聞こえているのかは定かではなかった。
「マジで!!?スッゲェ嬉しい!」
「ほへ?」
彼にしては珍しく普段より大きな声でそう言った。
「あ、いや俺いっつも自分で作ってたから・・・その・・・」
照れ隠しのつもりなのだろうが彼にはむいてない。
私達の登校は校門が見えてきたら時間差で行くことにしている。私達がつき合っているなんて誰も知らないからだ。(この場合琴那を抜きにしている。この前の女子も現実逃避しているらしく、信じていないらしい)
いつの間にか澪といる時間が一番幸せだと感じるようになっていた。もうつき合い始めて半月になる。
一時間目から昼休みまでは澪と話せるようなときはなかなか無い。下校するときも澪には部活があるので、時間が合わない。なので、一番気楽なのが屋上で食べる昼食なのだ。
「澪って、何が好きなおかずない?」
「何でも食えるけど、強いて言えば、卵焼きかな?甘くない方がいいな〜。菓子は甘いもんの方が好きだけど」
今日は何だか何時にもまして澪の口が軽かった。
「じゃ、毎日卵焼き入れてあげる。それに、澪の誕生日になったら、ケーキ作ってあげるよ」
私は軽いのりで言ったのだけれど、澪は寂しそうな悲しそうなそんな顔をした。私は勝手な判断で気のせいにした。
しかし、今思えば彼に対してとんでもないことを言ってしまったと思っ
ています。
もしも、あなたは・・・半月後に待っているものが永遠の暗闇だとしても
勇気を持って、誰かを愛せますか