「聖二!待たせてごめん!」
学校が終わったら少し離れた公園に集合。それが俺と秋奈のいつもの約束だった
「何しとったん?」
「うん…」
あんな風にはにかむ彼女は見たことがない
「野球部の…山岡先輩、知ってる?その先輩と話してた」
それから少しずつ山岡という名を聞くようになった。俺は相変わらず面倒くさそうに話を聞きながら、だんだん自分のなかで膨らむ気持ちを必死に奥底へ沈めた
そして、ある日―――
「おい、聖二!3組の橋本と付き合ってるってほんま?」
「え?」
「なんかお前らがこそこそ会ってるって…」
その噂は一気に広まった
「…先輩にね、彼がいんのって聞かれちゃった」
「…」
「同じクラスの奥田って女子居るやろ?あいつ、うちのことが嫌いやねん。だから、先輩に私が彼がいながら先輩にまで手ぇ出してるって吹き込んだんや。きっと」
「…ごめん、俺らもう会わん方がええな」
「何で?先輩だって話したらちゃんとわかってくれたし…うちにとって聖二は唯一話せる友達やねんから!…うちはこんなことくらい気にしいひんもん!だから…大丈夫だよ」
でも、それから少しずつ山岡の名前が秋奈の口からでることが減っていった