「中学2年からかな?色々あって流れ着いた感じ。」
綾川くん、少し話しずらそう。
「あ、話したくないなら別にいいんだよ。」
「いや、話す。」
綾川くんはコーヒーを飲み干して話しだした。
「……中学一年のとき、親が離婚っていうか、母親が家を出てったんだ。父親は仕事ばっかでロクに帰ってこないし、家に帰っても誰も居なかった。だから夜遅くまで外をウロウロしてたんだ。」
いきなり始まった綾川くんの過去の話。
淡々と話しているけど、当時はすごく傷ついていただろうことは、いくら私でも分かった。
「そんである日の晩に、たまたまココの裏路地に入ったらこの店の曲が流れてて、それから毎晩ここに来て店の前で曲聴いてた。なんか落ち着くんだよね。」
私は頭の中で店の前に立っている中学生の綾川くんを想像して泣きそうになった。
「あんまし毎晩いるからヤスさんが『中学生が店の前にいると営業妨害だから中に入れ』って。それからヤスさんに色々教えてもらううちにクラブの人たちとも仲良くなってきて…今に至る。」
綾川くんはそう話し終わるとフゥと息をはいた。
……ポロ
「槇原さん?!」
その話を聞いて、私はなんだか涙がこぼれてしまった。