バンドでも相変わらず“いい子”だった秋奈も少しずつ“自分”を出すようになっていき俺は寂しさを感じた。でも、メンバーの前で笑う秋奈に嬉しくも思い、これで良かったんだと何度も言い聞かせた
バンドを始めると、常に誰かが居て、むしろ俺らは2人きりになることがなくなった
彼女にとって“唯一”だった俺は仲間の“内の一人”におちた
俺は秋奈の弱さを救うことで自分の強さを感じようとしていたのかもしれない
すぐに逃げ道を探す俺も、そんな弱虫を弱い彼女を助けることで隠していたのかもしれない
秋奈は一人ではやっていけない人間だ
そのことに俺はもうずっと前から気付いていた。“いい子”でいる理由も、ずっと誰かを求めてんのも…そして、それが俺じゃないってことも。もし俺でいいなら、真っ先に選んでいただろう。他の誰かを好きになったりしないだろう。もうずっと俺はそばにいたんだから
次に秋奈が本当に必要としたい奴に出会った時は心から幸せを祈ってやろう
あの日の小さなお墓に俺はこっそりそう誓った。その誓いを思い出す度、俺は自分の心の弱さを思い知らされている。今も…
いつかこの気持ちに終止符をうつことができる、その日まで―――