やっと風邪が治った私は、学校に着くと自分の席に座って頬杖をついた。
あの時、何でケイタのとこに行ったんだろう。
行かなければ風邪うつされなかったし、キスされなかった。
……キス、か。
思い出して、何か恥ずかしくなった。
「おはよ、ユキ! 寂しかったよー」
「おはよ」
ナナミが教室に入って来るなり、私に抱きついてそう言った。
「俺も寂しかったよー!」
「ケ、ケイタは来るなっ!」
いつの間にか現れたケイタが、私に抱きつこうとしてきたけど私の一言に残念そうな顔をして止めた。
「いやあ。この前はありがとね」
「どーいたしまして」
へらへらしながら言ってくるケイタに、私は嫌みたっぷりに言葉を返す。
「ユキ、ケイタくんから聞いたよ?」
「え。何を?」
ナナミはにやにやしながら私の肩をつついてきた。
聞いたって、まさか……。
キスしたこと?!
「ケイタくんちに行って看病してたんだって?」
よかった。そのことか。
「う、うん」
「何だかんだ言って、やっぱケイタくんのこと──」
「ちょっと、ナナミ!」
私は慌ててナナミにそれ以上言わせないように口を出した。
ケイタのことが好きだからとかじゃない。多分。
あれは無意識の行動だった。
可笑しいなあ、私。
*
昼休み。
自販機の前で飲み物を選んでいると、突然後ろから話しかけられた。
「こ、小松さん!」
「え?」
振り向くとそこには、知らない女の子がいた。
違うクラスの人かな。
「えっと……」
「あ。私、天野っていうの」
「天野さん?」
「そう」
天野さん、可愛い人だなあ。
小柄で、ライトブラウンをしたサラサラヘアにパッチリした目。
男の人に好かれる要素が詰まったような子だった。
それからしばらく天野さんは黙り込んで、もじもじ指先を組んだりしていた。
そしてやっと口を開いたかと思うと、驚きの言葉を口にした。
「小松さんって……福崎くんと付き合ってるの?」
「え?」