「彼女おお?」
ノリコはアキを真っ先に歓迎した。
「さあどうぞどうぞ、おあがりください。」
アキは母に促され中に入っていった。
「声がでかいんだよ声が…。」
独り言を呟きつつ、カズヒロも中へ入っていった。
「この人が俺の彼女、東条アキ。」
アキは軽く頭を下げた。
「お父さんと、ユウダイは?」
「ユウダイは寝ちゃって、お父さんは風呂。そろそろ上がってくるかしら。」
ノリコは、夫のアキラを呼んだ。
すると、風呂から上がってきたアキラがやってきた。
「あっ…この方は?」
「カズヒロの彼女なんだって。」
ノリコから言われた途端アキラは、
「あ〜、これはこれは。ごめんなさい。こんな格好で。」
アキラは急にかしこまってしまったので、カズヒロが、
「いいよ父ちゃん。座って。」
と言われる始末。
気を取り直して、カズヒロは
「改めまして、この人が俺の彼女の東条アキ。」
親の笑顔を見ると、ますます言いづらくなるカズヒロ。
その気持ちにアキも、うすうす気付きはじめていた。
「あのさ…2人に言わなくてはならない事があるんだ…。」
「…何よ。そんなかしこまって。」
カズヒロの表情が徐々に暗くなっていく。
アキはそれを見るたびに辛くなる。
「アキ…耳が聞こえないんだ…。」