天野さんの言葉に驚きの表情をした私を見て、天野さんは少し取り乱したように早口で言う。
「だ、だって、いつも話してるし、一緒に登下校してるから……」
最後の方は声が小さくてよく聞こえなかった。
言い終わると天野さん下を向いて、またもじもじと手を組み始める。
「付き合ってないよ、私たち」
「ほ、本当?!」
私が言うと、天野さんはぱっと顔をあげた。
さらに私が頷くと嬉しそうに笑う。
「よかったあ。安心した。これでやっと告れる」
「告る?」
「うん。私、福崎くんに告白するの」
天野さんのその一言が、なぜか私の胸に突き刺さった。
ケイタに、告る?
頭が真っ白になって、何も言葉が出ない。
「私、勘違いしてたんだね。本当のこと聞けてよかったよ。小松さん、ありがとね」
「あ……う、うん」
天野さんは私に向かってにっこり笑うと、軽い足取りで去っていった。
──「私、福崎くんに告白するの」
あの天野さんの言葉を思い出すと、また胸が痛む。
何でこんなに痛いの?
*
「ユキ、元気ないね。何かあった?」
放課後になって、教室のベランダからグラウンドを眺めていると、ナナミが隣からそう言ってきた。
「何でもないよ」
「ならいいけど」
グラウンドではサッカー部が練習をしていて、その中にはケイタの姿が見えた。
しばらく練習を見ていると、笛がなって皆一斉に練習を止めた。
どうやら休憩みたいで、皆タオルや飲み物を手にとってベンチや土の上に座ったりしている。
ケイタはタオルを首に巻いて飲み物を取りに行こうとクーラーボックスに近づくと、マネージャーがクーラーボックスから取り出した飲み物をケイタに渡した。
そのマネージャーは、天野さんだった。
「サッカー部にマネージャーできたんだあ」
ナナミが言う声を聞いて、すぐに想像がついた。
ケイタに少しでも会うために、マネージャーになったんだって。
それがまた、私の胸に突き刺さる。