隆「珍しいな…聖二…」
突然登場した聖二に隆一は呆気にとられていた。その肩が大きく上下するほど息のあがった聖二の様子にさらに彼は眉をひそめた
隆「翼に会ったんやろ?なんかあったか?」
聖「いや何もない」
首をふる聖二
隆「……秋奈は?一緒に行ったんやろ?」
黙り込んだ彼をまじまじと眺めた後、隆一はまた背を向け作業をはじめた
隆「…そこにクッションあるやろ?…泣きたいんやったら、それ使え。そしたら皆に聞こえなくてすむやろ」
ベッドの上には確かにクッションがあった。聖二はその前に膝をつくと、それに顔を押し付けた
――聖二、うちのこと好き?――
――別に。嫌いじゃない――
ちがう
――“親友”やから――
ちゃうねん そうじゃない
――恋じゃない――
ちがうんや…――
言えなかった気持ち、言わなかった気持ち、隠した気持ち、隠してしまった気持ち…全てが背後から波のように押し寄せてきた
秋奈の言葉も自分の言葉も全部が聖二の心に刺さった
聖「…うわぁぁぁあああ!!」
階下にいる猛達に届かないように聖二は強く顔を押し付け大声を出して泣いた
男泣きか…一曲かけそうやな
隆一がぽつりと呟いた