「お帰りなさい」
「パパおかえり」
いつもの笑顔、いつもの温かい料理の香り。
僕は娘が大好きだ。 目の中に入れても痛くないとは、正にこのことを言うのだろうと思う。
ただ最近違うのは、「この娘が大きくなったら、一体どんな娘になるんだろう?」と考えた時に、フッと優子の顔が思い浮かぶようになってしまった。
初めてのキスから2週間。 今夜はボーリングに行く事になった。
「うわーっ、すごい!! またストライク!!」
無邪気にはしゃぐ彼女。
「吉澤さんってボーリング上手いんですね」
同い年なのに「吉澤さん」って呼ぶのは、まだ彼女の中で距離を置こうとしているのか…
でもまだ2回目のデートで、いきなり名前を呼ぶのに抵抗があるのか…
「白石さん」と言いかけて思い切って「優子ちゃん」と呼んでみた。
その時の「ハイッ」と言う彼女の返事は、これ以上ないくらいの愛らしい笑顔と一緒だった。
ボーリングの後の食事の時間には、「吉澤さん」から「亮一さん」に変わっていた。
帰りの車、彼女を降ろす場所はまた家から少し離れた公園の前。
まだお互いが軽く触れ合うだけのキスをして、
彼女がおやすみを言う前に僕は切り出した。
「来月の第2週の土日、空いてない?」
「スケジュール帳見てみないとわからないけど… 亮一さんの為なら空けるよ」
来月の第2週の土日…
それは僕の会社の慰安旅行の日だった。