神田の手を叩いたのは、お金を落とした男子生徒だった。
神田が固まっている間に一人で小銭を拾うと教室を出ていった。
しばらくして、神田はポツリと言った。
「…浦田。俺なんかやらかしたか?」
「今の神田の行動に非はなかったと僕は思うよ。以前に恨まれるような事やったなら別だけど。」
淡々と答える浦田。空気を読めないコイツに今は救われてるな。
「それはない…と思う。そもそもアイツと話したことすら無いしな」
ふーん。と教室の入り口を見つめつつ、
「今のは秋葉くんだよね。ま、機嫌が悪かっただけかも知れないしさ」
気にすんなよと軽く肩を叩いてきた。
「そうだな」
返事を返しつつ、教室の入り口を見る。
ユニホームに着替えた野球部員が急かし合いながら、廊下に出ていった。