話しかけるべきか、否か。
用事があるから急いで帰ると言った浦田と別れ、下足場を出た神田は懸命に生徒に訊ねている、立木を発見した。
(仲が良いってわけでもないし…、昨日の今日で親しげに話しかけてもいいのか?)
少し悩んだが、結局声をかけることにした。
「た、たちっきぃ!」
(か、噛んだ…。恥ずかしい…)
そんな噛んだ…神田の内心を知らず、気がついた旭は手を振って近づいてきた。
「神田くんこんにちはーっ」
ビキッ。
何だか周りの視線が痛いような気がする。
(…気のせいだろ。多分)
神田からも近づき、普通に話せる距離で足を止める。
「どうしたの?何か用事?」
「いや用ってわけじゃないけど。はかどってるかなって。…自殺志願者の情報集ってるんだろ?」
旭の笑顔が少し陰った。
「うん…。でもあの時間に屋上を見た人が居なくて…。もしかしたら私と神田くんだけなのかも」