君とすごした日-10

シンプル 2011-02-21投稿
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美樹と優子は十年来の親友だと、以前優子から聞いていた。
電話の内容は、
-美樹も少し前に妻帯者と付き合って辛い思いをした。最近優子の様子が変わったから心配で聞いてみたら、僕の存在を聞かされた。だから、優子を悲しませるような事だけはしないで-
というものだった。

いくら親友とはいえ、第三者に僕の携帯番号を教えた優子に少し疑念を抱いたが、それよりも自分の前では努めて明るく振る舞っていた彼女の辛い気持ちを、男の身勝手さで気付いてやれなかった自分が恥ずかしかった。


電話を切った後、心の乱れを家族に見せないように玄関を入ったつもりだったが、
「パパ、おかえり! 元気ないね…」
愛美の言葉に、胸を突き刺された気がした。
「どうしたの?」
由美子も心配そうに続ける。
「ちょっと仕事で失敗したからな…」
そう言うのが精一杯だった。
「じゃあ、愛がパパを慰めてあげる!!」
思わず愛美を抱きしめた。


娘を寝かせつけてから、久しぶりに妻と一緒に晩酌をした。

「なあ、由美子。俺の事どう思ってる?」

「どうしたの?急に。もう酔った?」


いくら呑んでも酔えない気がした。
水割りのグラスの向こうの妻を見つめながら、目をつぶると微笑む優子が浮かんで。


由美子と優子を比べる、卑怯な自分がいた。

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