「あー やばい 勉強しなきゃなぁーー 」
ふとガキ使を見ながら呟いてしまう。
明日、テストだというのに、居間のこたつに入ってダラダラやってる自分がいた。
机上に広げられた教科書やノートは、やり終えた感を出しているが、それは家族に「勉強しろ」と言われないためだけの状況。
トントンと階段から誰かが下ってくる音。
妹か姉か…。どっちでもいい。
ガラリと戸が開かれ、現れたのは妹のほうだった。
妹「なにしてんの?」
俺「勉強だろうが」
妹「携帯いじってガキ使見ながら?」
俺「いいじゃん。なんとかなるさ」
妹は俺と向き合うようにこたつに入る。テレビがみえない…
俺「ガキ使見えねから、どけてくれ」
妹「勉強しなよ。中学とは違うんだよ?もうすぐ高2なんだからさ。」
中学時代は学校自体のレベルが低かったこともあって、俺は勉強せずとも常に学年10番以内の成績はとっていた。
俺「いいじゃん。勉強めんどくさい」
妹「私は嫌だよ。同じ学年に兄ちゃんがいんのは…」
そうだよな、同じ学校で同じ学年に留年した兄がいるなんて。
俺「お前も勉強しろよ。推薦で受かったんだからさ。課題出たろ? 怠けると俺みたいになんぞ」
妹「まだいいよ、提出は遠いのさ。でも入学式に早くなんないかなー」
こいつに高校の不安はないのか?
俺「意外と俺の高校いろいろときついぞ?」
妹「兄ちゃんと姉ちゃんがいるから大丈夫。不安はない。」
余裕だなー。のんきだなー。
俺「何人くらい友達入んの?」
妹「推薦で私含めて7人受かったよ。一般では20くらい受けるらしい」
それと、妹は「まあ、受かるかどうかは分かんないから」と付け加えた。
一般入試を受けた俺は、担任に同じ台詞を入試直前まで言われ続けた。
成績はよかったが授業態度、生活態度は悪かった。
内申\書で落とされるかもしれないと。 まぁ、受かったからいいけど
俺「今更だけど、なんで同じ高校なの?好きな人も一緒?」
妹「まず好きな人はいないから…」
俺「じゃ、なんで?」
こいつならもっと上の高校行けんだろが
妹「家から近いし、兄ちゃんいるしさ…。同じ高校嫌かな?」
本心は姉も同じ高校なだけに、これ以上身内が増えんのは嫌だ。
俺「まぁ、いんじゃないすかね…お前みたいな綺麗な奴の兄ってだけでうれしいもんさ。」
嫌なんて言ったってもう変えられないしな。
妹は顔を机に伏せながら
聞いてきた。
妹「兄ちゃんは好きな人いんの?」
なんだよ、知ってるくせに。
俺は中2の終業式以来、好きな人がいない。彼女と別れてから…
妹「高橋さんは?中2以来みないけど…」
わざとらしいやつだ。
知ってるだろ、別れた理由くらい
妹「やっぱ気まずかったの?」
高橋さんには俺の童貞を捧げた。
ゴム無しでやった俺は妊娠すんじゃないかとか色々不安なってさ。
当時、中1と中3の姉妹に相談にのってもらった。友達にも噂が広がって、高橋さんとも話しづらくなりすぐに別れた。
そう、俺の消したい過去の一つだ
妹は顔をあげて
妹「ねぇ、聞いて。私は意外と真面目かもよ」
その言い方は誤解を招きそうだ。
かわいいからと言って妹はダメだろ…
変なこと言うなよ…俺! でも、反応が見たい!
俺「最近、かわいいと思うのはお前だけ。付き合いたいくらい」
言っちゃった。
妹「私でもいいの?」
照れはしないな。さすが俺の妹。
俺「お前、一応女だよね?」
妹「じゃなくて、兄妹同士でってこと。あれだよ…、結婚とか子供とか出来ないじゃん………。」
沈黙が長い。話も飛躍しすぎ。
俺「あと世間も怖い」
妹「じゃなくて、いいかどうか」
俺は近親相姦とか同性愛とか全然大丈夫。
俺「いいと思うよ、結婚しなきゃいいし、子供も産まなきゃいいし、事実婚ってことで」
なんか深夜のテンションで会話がおかしいな
妹「私は子供が欲しいけど……………。」
なんだよその沈黙は!
テンポよく話してよね! ほんと変な空気だよ。
俺「えっとさ、まぁ、あれだ。」
妹「あれって何?」
妹は真っ直ぐに俺の目を見て尋ねる。
俺は持論を自信無さ気に話す。
俺「養子をとればいいのさ。それが嫌なら俺と暮らす資格はない」
答えを聞いた妹は目を閉じて少し考えて
妹「養子か… いいよ。それは! さすがじゃん!」
少し間を置いて、
俺「お前、本気で言ってんの?」
妹「えっ、兄ちゃんがその気なら」
その気ってさ、どの気でしょうかね?妹さん
変なこと言わなきゃよかった。
俺「お前、俺のこと好きかよ?」
妹「まぁね、兄ちゃんが海外ドラマ好きなくらいに」
俺「それは愛してるってレベルだぞ!」
妹「自分で言うかな…
まぁ、それくらいかな」
恐ろしい妹だ。兄に向かってよく言えるな。親に聞かれたら立場ないぞ。
再び顔を伏せなが聞かれる
妹「あとお姉ちゃんも兄ちゃんのことが好きだとかなんとか」
なんだよ…。家族の関係が危ないぞ
俺は冗談まじりで話す
俺「じゃあ、姉と三人で暮らすのか」
妹「はぁ?私だけで十分じゃないの?………、姉ちゃんのは嘘だから……」
言ったのはお前だろ。
どうやら今日の俺は、妹と越えてはならない一線を片足で跨いでいるらしい。
やばい……、やばいよ。
妹の目が綺麗だなー。
俺を信じてる目だな〜
俺「分かってますよ、お前のも冗談だよな。」
いやぁー深夜のテンションは怖いね!
俺「ほら寝な?勉強すんだから」
妹は寂しげに呟いた。
わかんないよ…、もう…
俺も分かんね…
トントンと階段を上がる音、時計を見れば12時過ぎだ。
俺も寝るかな。
電気を消して、階段を上がり姉妹の隣の部屋にはいる。
寒いな…。ストーブを点ける。
そしてドアが開いた。
妹に何したんだよ 馬鹿…
姉は入ってくるなり俺の爪先を踏んだ
俺「なんだよ、痛いよ、帰ってよ。変態!」
姉「お前には言われたくないんだよ!お母さんにあの事話すからな!」
あの事ってのはアレだよ。消したい過去?さ
俺「ごめんなさい… 妹には何もしてません。泣いたりしてんの?」
姉「してんだよ!理由はお前に聞けって…」
はぁ… 姉はため息をついた
俺は妹との会話を話す。 話し終えると姉に蹴られ、叩かれ、睨まれる。
爪先じゃなくてありがとね!
姉「馬鹿だろ 馬鹿…、馬鹿だよ」
馬鹿だよ俺は…
そして妹も…
姉「あいつが本気ならどうすんだ。簡単にそーゆうこと言うな!」
「本気なら」の「なら」って部分に期待したい俺がいた
姉「もう私と仲良くできると思うなよな。学校で会っても無視だから。部活中もだからな」
姉はそう帰り際に言い残した。
俺は電気をけした。そうだ、寝てわすれちゃえ