アキは、パンフレットを取り返した後、東京の街をぶらぶらしていた。
ろう学校でも見学していこうかな…。
アキは軽い気持ちで、ぶらぶら歩いていた。
すると、
「あっ…アキさん!」
前から、タクヤさんが歩いてきた。
『タクヤ先輩…』
「どうしたの?東京まで来たんでしょ?顔色悪いよ。」
『いえ…何でもないです。』
なんでもないと誤魔化すアキを、見るに見兼ねたタクヤは、
「とりあえず、何か食べる?奢るよ。」
アキは小さく頷いた。
『ありがとうございます。』
少しお洒落なファミレス。
「どう?為文大学のこと…少し考えてくれたかな?」
タクヤはアキの進学を異常なほど気にかけてくれているようだ。
『…ええ…』
曖昧に伝えた。それが更に心配させたようで、
「何か…あったの?」
アキは俯いてしまった。
「あ…そうだよね…アキさんの悩みなんか聞ける立場じゃないし…。」
アキは、迷っている最中だった。
タクヤ先輩だからとはいえ、悩みを気軽に打ち明けられる関係にはまだなっていない。
『なんかすいません…私が悩んでいると思って、心配してくれたんですよね?…なのに私…』
タクヤは首を横に振り、
「いいんだ。まだそういう仲じゃないって…。」
自然と、気まずい空気が流れ始めた。
『本当に…ごめんなさい。』
すると、タクヤは、
「あの…アキさんにもう1つ、言いたいことがあるんだ。」