「これがいい」
「ん?どれ?」
秋奈が手にしたのはいるかの抱き枕だった
「いるか?何でこれ?」
「だってなんか癒してくれそうじゃない?それに見てや。この目がね、うちに買ってって言ってるみたいやねんもん」
秋奈がいるかに顔を近づけるのを見て伸昭はくすくす笑った
「な…何なん?」
「いや、可愛いなあと思って」
その言葉に秋奈はぱっと耳を赤くし、いるかを元の場所に素早く戻した
「あれ?買わんの?」
「だって別に自分を可愛くみせたくてこれを選んだわけじゃないもん」
「別にそんなこと思ってへんよ。第一、いつも俺の前じゃわざわざ自分のこと、よく見せようなんてしないやん、秋ちゃん。むしろ、別に〜とか可愛げない反応ばっかし。だから…」
そう言いながら伸昭は他のぬいぐるみを探り始めた
「そうでもないよ」
伸昭の言葉を遮る秋奈の声
「え?」
「最初は軽いし、やな奴やと思ったの」
「…俺が?」
「うん。どう思われたって関係ないやって思ってた。…でも、今は…」