「ユキ、どーしたの?」
何で追いかけてきたの?
心配なんかしないで。
「放して!」
私はケイタの腕を振り切って、ケイタに向き合い睨みつけた。
「私、あんたのこと大嫌いだから! 自己中で自分勝手で気分屋で、凄いムカつくの! だからもう話しかけないで! これ、返すから!」
私はそう言い放つと、つけていたネックレスを強引にむしりとってケイタに投げつけ、走ってその場から立ち去った。
*
学校から少し離れたところで走るのを止めてゆっくり歩く。
その時頭を巡るのは、私がケイタに言ったあの言葉だった。
──「私、あんたのこと大嫌いだから!」
何であんなこと言っちゃったんだろう。
あんなこと言うつもりじゃなかった。
ただ、ただ私は……
でももうこれでいいんだ。
これでケイタは私につきまとわないだろうから、天野さんと上手くいくんだろうなあ。
天野さん、と。
うん。これで、いいんだよね。
「これでいいんだよね……」
なのに何でだろう。
涙が溢れてくるんだ。
*
──「私、あんたのこと大嫌いだから!」
最低だ、私。
「ちょっとユキ、聞いてるの?」
「え? ああ、ごめん。聞いてるよ」
「じゃ何の話してたか言ってみてよ」
「えっと……」
「ほら! 聞いてなかったじゃん」
「ごめん」
私はそう呟くと、机に突っ伏して黙り込んだ。
そんな私を見たナナミは私の前の席に座って言った。
「何かあった?」
「……何も」
「嘘。絶対何かあるでしょ。言ってみなよ、聞いてあげるから」
私が顔をあげてナナミを見ると、ナナミは真剣な顔をして私を見ていた。
上手く言えるか分からないけど、言ってみよう。
私は言葉を探しながらゆっくりと話し始めた。